昔はむし歯や歯周病などで歯を失うと、周りの歯を土台にして作るブリッジか、取り外し式の入れ歯しかありませんでした。 しかし、これらの方法は日本の保険がきく治療ですが、他の歯に大きな負担をかけることになります。「負担」と優しく言いましたが、実はかなりの「犠牲」です。 ブリッジは失った歯を作る為に両隣の歯を削ることになり、削った歯の寿命が短くなりがちです。フロスで掃除もできなくなるので、歯間ブラシという道具を使わないと綺麗に掃除できなくなります。 また、取り外しの入れ歯は、バネを周りの歯にかけることにより、歯に苦手な横に揺らす力がかかってしまいます。また、ものを噛むとどうしても浮き沈みがおき、入れ歯が微妙に動いたりして、違和感を感じてしまいます。 インプラントとはチタンでできたインプラント(人工歯根)を骨の中にを埋め込み、それを土台に人工の歯をつくるという治療方法です。あたかも自分の歯が戻ったかのように噛むことができます。 周りの歯を削ったり、負担をかけずに、失った歯の位置に歯を作ることができます。 そのため周りの歯の寿命を延ばすことにも繋がり、結果的に他の歯を守ることができ、「予防」にもなります。 また、インプラントを入れ歯の支えや沈下防止に応用することもできます。 残念ながら、欠点もあります。費用がかかる上に、骨とインプラントがくっつくまでの期間があるので、他の処置よりも治療期間がかかります。
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インプラント手術の手順 |
☆二回法 |
1回目のオペで人工歯根の埋入手術をします。 2回目のオペで少し歯ぐきを切り、歯肉を整える手術をします。 外科処置が二回あります。 |
●第1次手術 |
人工歯根部分だけを埋め込みます。 |
1週間から10日で抜糸し、その状態で3ヶ月以上骨と結合するのを待つため、経過をみます。 (この間に術後の感染がないか定期的にチェックし、周囲の歯のケアを行います。) |
●第2次手術 |
骨と結合したインプラントの本体に歯茎の形を整える手術をし、仮歯をいれます。 |
●型取り |
最終的な歯を作るための型取りをします。 |
●歯を入れる |
最終的な歯が入ります。 |
一回法 |
外科処置が一回なので一回法といいます。 二回法の二次手術を同時に行う方法です。 |
●手術 |
人工歯根を埋め込み、歯肉の形を整えながら治す土台を入れます。 |
1週間から10日で抜糸し、その状態で3ヶ月以上経過をみます。 (この間に術後の感染がないか定期的にチェックし、周囲の歯のケアを行います。) |
●歯茎を整える |
仮の歯を入れて最終的な歯茎の形を作ります。 |
●型取り |
最終的な歯を作るための型取りをします。 |
●歯を入れる |
最終的な歯が入ります。 |
インプラントは骨の中に埋入します。 そのため骨がないところにはインプラントが埋入できません。 しかし、骨があるところにインプラントを埋入すればよいかというと、そんな簡単な話でもありません。インプラントがどんなにしっかり埋入されようと、最終的な歯がうまいこと入らなければそのインプラントは何の意味もありません。 しっかり理想の位置にインプラントを埋入するためには骨の造成が必要になる場合があります。 骨補填材という材料を使って、骨を誘導したり、骨の代わりにする場合は、「小さい骨造成」扱いになります。どこか他の部位(口の中)から骨をブロックで採取して骨造成する場合や、骨補填材の使用量が多い場合は「大きい骨造成」扱いになります。 |
家を建てる時や何かを設計する時には、設計図が必要ですよね。それがインプラント治療においても、CTを撮り、どの太さで、どの長さのインプラントをどの様に骨に埋入するかをシミュレーションすることが必要です。しかし、結局手術ではフリーハンドでやることになります。家を建てる時に、図面もなしに「頭でシミュレーションしたので、さあ建てましょう。」と言われてもちょっと不安ですよね。簡単なケースには絶対必要かと言われたらそんなことはありませんが、大きなケースやシビアなケースでは微妙なズレも許されない時があります。 そんな時にはこのガイドシステムが役立ちます。インプラントを予定通りの所に埋入できるようにする誘導ツールです。昨今のガイドシステムは精度も増し、CTデータからより計画通りの場所に正確に埋入できるようになりました。簡単な症例においては歯ぐきを切って開かずにオペすることも可能だったりします。(可能ですが、当医院ではインプラントが骨内にしっかり入っているのを確認するのために、歯ぐきを開かせてもらうことがほとんどです。) |
リスクについて |
処置後のケアが大切 |
インプラントはメインテナンスいらずの永久的なものではありません。素材自体は虫歯になりませんが、歯垢がついたままになると、天然の歯と同じように歯周病(インプラント周囲炎)にはなってしまいます。また、かみ合わせ(力のバランス)やネジの緩みでインプラントがダメになることもありますので、定期的な経過観察が必ず必要です。 さらにインプラントと被せ物を繋げる部分にはネジを使っています。5年くらいでネジを新品に交換することが必要になります。 インプラント治療も術後のケアをきちんとすることが大切です。 |